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メーカーやパラグライダーの最新情報をお届けします。

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オンラインセミナーを行いました


新型コロナウィルスによる緊急事態宣言が出され、各自治体からも感染拡大を防止するために「不要不急の外出は避けてください!!」との自粛要請が出されています。みなさんも、自宅で過ごされていることと思いますが、私も4月に入ってからは営業に行くこともできず、ずっと自宅での仕事となっています。

そのような中、バーズパラグライダースクール様のご協力により、オンラインセミナーを開催いたしました。テレワークが叫ばれて久しいですが、それを体験することが出来ましたので感想も交えてご紹介したいと思います。

ネット会議ツール

今回利用したネット会議のツールは、多分みなさんも使っておられるだろう「ZOOMミーティング」です。
バーズパラグライダースクール様にはワークショップとして主催いただいたので、ZOOMの主催者もバーズ様で、私は招待していただいて会議に参加する形となりました。



バーズ様ではプランを有料のものにグレードアップされていましたので、無料版での40分制限がなくなっていました。ちょっとしたやり取りや少人数でのやり取りならば、40分で一旦セッションが切られてしまっても再接続が容易でしょうが、大勢で行う場合は再び全員が参集するのが大変でしょうから、やはり有料版の方が良いと思いますね。
ただ、いろいろと検証するような段階ならば当然無料でOKかと思います。無料でも機能的には時間だけの制限らしいですから。

講義中はマイクミュートで

今回は参加者が結構多かったこともあり、私が講義を行っている間はみなさんに「マイクミュート」していただきました。静かにしているつもりでも、マイクが音を拾って聞こえてしまうことも起きてしまいますので、ミュートしていただいて良かったです。後、参加する場合のオーディオ設備はやはりヘッドセットがベストかと思います。最近のノートパソコンはマイクもカメラも内蔵されているので、そのままスピーカーから音を聞きながら参加することもできるのですが、やはりスピーカーの音がマイクにまわってハウリングが起きかねませんので。
それから、リアルタイムに双方向であれこれディスカッションと言うのは難しそうな気がしました。音質がバラバラですし誰が話しているのかがわからないので、別途質疑応答とするのが良いと思います。今回もこの方式で行いました。



私の機材

私が自宅で使っているPCはDESKTOPなので、WEBカメラは付いていません。
最近はテレワークに使うWEBカメラが家電ショップはもとより、ネット通販サイトでも品切れ状態です。かくいう私も調達することが出来ず、ちょっと困っていました。仕事で使うノートにはカメラが内蔵されているのでそちらでも良いのですが、やはりDESKTOPの方がスペックも良いですし、モニターも大きいのでありがたい。そこで、最初は使っていない中華製のアクションカムをWEBカメラとして使おうとしたのですが、画角170度は広すぎて使い勝手が悪いです。



そこで、ちょっとネットで調べるとスマホをWEBカメラとして使う方法があるらしいので、そちらを選択することにしました。
私が使ったのは自前のiPhone11とiVCamと言うアプリ。PCとiPhoneそれぞれにインストールしなければいけませんが、入れてしまえばUSB接続でもWifiでもPCに繋がります。私はUSBでつないでいますが・・・。



スマホは車載用のスマホホルダーを利用して固定しています。なかなか便利ですね。
それから、ZOOMは背景をバーチャル背景と言ってあらかじめプリセットされた画像か自分で用意した画像に差し替えることができるので、部屋が散らかっていて恥ずかしい・・・って場合に重宝します。私はバックドロップを自作しました。

これからの主流に

今回のコロナウィルスによる在宅でのテレワークによって、実は意外に在宅でいけると気づいた方も多いのではないか?と思います。
正直、私は前職でも営業職でしたので、自称モバイルワーカーでノートPCとテザリングさえできれば仕事はある程度できましたので、今の状況でもそれ程苦労はしていません。今の会社もセキュリティーとBCP対策で結構クラウド化を進めてきましたから、それが役立っています。

ただ、そうなるとやはりインターネット上のトラフィックが重要になりますね。最近はバックボーンも大きくなって速度も確保されているとは言え、多くの人が集中して画像付きのパケットをバンバン投げたら遅延も起きてくるかもしれません。少数の場合は影響が少ないかもしれませんが、大勢いたら影響あるでしょうね。光じゃないとつらいですね。

それから、自宅でのPC接続はできれば有線LANの方が良いかもしれません。Wifiでも最近は速くなっているのですが、有線の方が安定している気がしましたね。

と言うことで、1時間ほどのセミナーを実施してみた感想でした。バーズパラグライダースクール様、ありがとうございました。

エアハートでも、みなさんに向けたオンラインセミナーとかユーザーミーティングなんかを企画したいと思います。まずは実験的に近々何かやりたいと思いますので、その際はぜひ、参加してみてください。

ツールは何を使うか検討中ですが、YoutubeのライブかFBのビデオチャットか?まぁ考えてみます。

それではまたお会いしましょう!!


NIVIUK KOYOT4に乗ってみた


NIVIUKのEN-AクラスKOYOT4。同時に軽量のPモデルもリリースされましたが、今回はNIVIUKのエントリーモデル4代目になるKOYOT4をPikaichi Checkです。

テクニカルデータをチェックする

KOYOT4のテクニカルデータです。



セル数は39。前モデルのKOYOT3は36だったので3セル増えています。
アスペクトも実測で4.75。KOYOT3の4.95からは小さくなりましたね。ここ最近のNIVIUKは、HOOK5もそうでしたがアスペクトが小さくなる傾向にあります。これは、それほどアスペクトを上げなくても十分なパフォーマンスが得られること、各モデルの性格や特徴を明確にして乗り手重視の開発を行っていることに尽きるのではないか?と思います。とにかく、NIVIUKのグライダーは乗りやすいことで定評がありますが、乗り手に負担をかけないような設計思想は一貫していますよね。



広げて見た感じも、とてもまとまっている印象です。作りも丁寧で綺麗ですね。



インテイク周りはNIVIUKテクノロジーであるニチノールが縫い込まれた手の込んだ作りです。もちろんグライダーを広げただけで、エアインテイクは自立してライズアップ時のインフレーションを容易にします。



ライザーはA,A'、B、Cの4本構成で、ラインはAが緑、BとCは青に色分けされています。(スタビとブレークは赤)
このあたりの構造は、これまでと大きな違いはありませんが、ブレークコードのホックがマグネットに変更されているのは嬉しい改良ですね。

乗ってみた

KOYOT4のサイズ26(75-95Kg)に、上限の94Kgで乗ってみました。

ラインチェックは色分けされているので簡単に行えます。また、ライザーも適度な太さがあって握りやすいですね。
Aライザーだけを持ってフロントライズアップを試みたところ、最初少しの手応えを感じますが、45度程度まで上がってくるとテンションは軽くなり、そのままスムーズに頭上まで上がってくる流れでした。適度なタイミングでAライザーを放してあげれば特段ブレーキングしなくてもキャノピーは頭上で停止してくれます。この時、もたつくような印象はありませんでした。



意外に良く飛ぶ

冬の朝霧で、そこそこのコンディションだったこともありますが、テイクオフ後にサーマルに入ったのでそのままセンタリング。ブレークのフィーリングはとても素直な印象で、Aクラスと言いながらも反応は良いと思いました。バンク維持も容易で、このクラスでありがちな「戻ろうとする」動きは小さい気がしましたね。



旋回はNIVIUKらしいと言うか、旋回側のブレークコードで微調整を行えば外側はそれ程気にする必要はありません。サーマルの中においてもしっかりと上昇の強い所へ入っていく特性が感じられますので、高高度からソアリングのトレーニングにも使えるだけのパフォーマンスを持ち合わせています。正直に言うと
「意外に良く飛ぶなぁ!!」
と言うのが感想ですね。

それ以外のベーシックな部分について検証してみると、ブレークの操作感は重すぎない適度なテンションがあります。操作域は広く、失速を感じるまでは相当粘ってくれます。ピッチングに入れてみましたが、ピッチ安定はとても良く、前に突っ込むことはありませんでした。ローリングは旋回性が良いことからもわかるように、とても素直に入れられます。とにかくブレーク操作の追従性がとても良いです。講習生にとっては少し「素直すぎる」かもしれませんが、この少し機敏とも言える操縦特性に慣れて行けば、2機目、3機目のグライダー操作においてか必ずプラスに働くことでしょう。

翼端折りもA’ライザーを引くことで簡単に折ることが出来ます。折るときのテンションは軽いです。沈下もしっかり感じられるので降下手段に十分有効かと思います。

総評

NIVIUKのAクラスKOYOT4は、エントリーモデルではあるものの、その後継続的に乗ることも可能なパフォーマンスを持ち合わせています。NIVIUKは

「パイロットとして訓練し、経験を積み、自信と知識の面で進化する際にあなたを支援する本能的で直感的な翼です。リラックスした動作により、飛行のすべての段階で優れた安定性が保証され、パイロットは最初の学習段階で着実に前進できます。」

と言っていますが、まさにその通りの特徴と性能を感じることが出来ました。

安定していながら、やはり微妙な操作は微妙な操作として習得するための課題を与えてくれる翼。それを乗り越えれば、習得した技術はすなわち性能となってあなたの飛びをグレードアップしてくれる。そんな翼であると思います。

1機目ですがオールマイティーな翼として、ある程度の性能も欲しいという環境のエリアやスクールの校長先生に試して欲しいですね。


PHI FANTASIAに乗ってみた


PHIからリリースされたLo-AカテゴリーのFANTASIA(ファンタジア)。これまでPHIのエントリーモデルと言えばSONATAでしたが、それよりもさらに扱いやすいモデルとして開発され、PHIでは「万人の翼」と評しています。

今回、このFANTASIAをPikaichi Checkです!!

テクニカルデータをチェックする

では、FANTASIAのテクニカルデータをチェックします。



今回試乗したのはサイズ22。レンジは75-95Kgですが、これに上限いっぱいの95Kgで乗ってみました。

Lo-Aと言うこともあってアスペクトは投影で3.45、実測で4.69と言う数値。見た目も「初級機だなぁ」と言う印象です。ちなみに、同じAクラスのSONATAは投影で3.42、実測で4.72と近い数値になっています。



エアインテイクは36セルでリーディングエッジ側にはナイロンロッドが装備されています。下面側は半円形状になっていて、写真のように広げた際に自立する構造になっています。そのため、ライズアップ時のインフィレーションを大いに楽にしています。
構造上の特徴として挙げられるのは、ラインにダイニーマを一切使用していないことでしょう。これはブレークコードに至るまですべてのラインに対してです。やはり、ダイニーマの特性である伸縮する問題による影響を排除したかったのだろうと思います。また、サスペンションレベルが3つ(アッパー、ミドル、ロワーの3段階)しかないことも大きな特徴となっています。これも、翼の形状を安定的に保つ意味で大きな役割を担っていると思われます。

乗ってみた

ウィングキッス朝霧テイクオフにFANTASIAを広げると、翼がとても小さく近く見えます。ライザーもシンプルな構造なので、ラインチェックも素早く行うことが出来るでしょう。パラグライダーを習得する講習生にとって、ライザーの構造が単純でラインチェックがしやすいと言うのは負担が少ないし、とても良い隠れた性能だと思います。



Aライザーは2つに分かれており、A1ライザーには赤に色付けされたテープが付けられています。ラインも同じく赤で統一されています。A2ライザーにはオレンジが(ラインは赤)、Bライザーは水色(ラインも同じ)、Cライザーは黒でラインは薄緑になっています。ライザーテープの太さも初級機らしい太さだと思います。

軽いライズアップに驚いた

FANTASIAは、これからパラグライダーを始めるための「1機目」を想定してデザインされているのですが、「ライズアップは手応えがあるのかな?」と勝手に想像していたら全然違っていました。
とにかく軽く上がってくるのです。



写真はあまりにも軽くて頼りない印象だったので、思わず
「ホントに上がってきてんの?」
と振り返っているシーンです。それほど軽いですね。さらに強調したいのは、ライズアップが勝手に頭上手前で止まること。最初は
「上がってこないのかな?」
と思い違いをして取りやめてしまったほどです。それほどイージーなライズアップ特性を持っています。



しっかりと頭上確認を行った後で、ゆっくりと荷重をかけて走り出せばテイクオフはとても簡単でした。

ゆったり、ゆっくり飛んでくれる

フライトしてまず感じたのは

とてもゆったりと、そしてゆっくり飛んでくれる

ということ。



最近のグライダーは、たとえエントリーモデルと言えども十分なパフォーマンスを持っていて、飛行速度もそれなりであることが多いのですが、このFANTASIAはとてもゆとりのある速度感とでも言いましょうか、本当にゆっくりと飛んでくれる印象でした。

それではブレークでの操作はどうか?

初級機らしく、大らかな特性と言うか、引けばしっかりと手応えのあるテンションを伝えてくれるフィーリング。動きも決してクイックではありませんが、引き始めからゆったりとその操作に追従してくれるような動きを見せます。十分にスキルのあるパイロットにとれば、その動きは「もたつき感」と捉えられるかもしれませんが、あくまでこのグライダーはエントリーモデルであり、グライダーの操縦を習得するための道具ですから、その観点で見れば十分反応は良いと言えると思います。

また、サーマルなどのリフトにはしっかり反応し、速度が遅いことも関係していると思いますが、簡単に上昇してくれます。上限に乗っているにもかかわらず、それほど良い条件とは言えない日に、そこそこ滞空出来たのは驚きでした。ただ、ブレークコードによる旋回操作などを行うことで、しっかりと沈下してくれますので、スクーリングなどの場面において講習生が降りられずにアタフタしてしまう・・・と言うことは避けられそうです。

A2ライザーによる翼端折りも軽く簡単に行えました。ただし、これはPHI全体に言えることですが、翼端折りライザーは真下に引き込むようにしてください。外側へ引くような操作ですと、しっかりと翼端を折ることが出来ません。



ランディングもとてもイージーです。元がゆっくりである上に、ブレークコードの操作範囲が広いので、最終アプローチでの速度管理はとても簡単でした。ハーフブレークを上手く使ってあげると狙った場所にかなりの精度で降り立つことが出来ます。ブレーク操作に関しては、かなり粘ってくれます。ですので、スクーリングにおいても、慌てることなく適切な操作を習得することができるでしょうし、誘導するインストラクターもFANTASIAを信頼して操作を指示していただければと思います。

総評

PHIのFANTASIAは、まさに

THE 初級機

と呼ぶにふさわしい性能を持っています。
初級機(特にエントリーモデルと言われるもの)には、パラグライダーをやったことのない人が乗るのですから、私たちのようなパイロットからは想像もできないようなことが起こるものです。それこそ、無茶な操作やあり得ない操作などは想定内でなければなりません。

FANTASIAは、おそらくそれらすべてが「想定内」であるだけでなく、それを懐深く見守りながら成長を手助けしてくれるもう一人の先生…と言ったところでしょうか?
スクールの校長先生には、ぜひ一度試していただきたいと思います。乗っていただければ、FANTASIAの一見地味ですが、懐の深さや寛容な性能を感じていただけると思います。


FLYMASTER用のCTR命名規則と対応したCTRファイル


AIRHEARTがFLYMASTERユーザーに提案するCTR命名規則です。
FLYMASTERのCTR機能では警告は全て同一画面となります。またCTR名も15文字しか表示できないため、これらを運用上でカバーする必要があります。

※動作の詳細は FLYMASTERにおけるCTRの設定方法と動作について をご覧ください

従って、警告画面に表示されるCTR名で制限内容などが判別できるようにしたのが次の命名規則です。

◆命名規則
・名前は15文字以内とする
・名前は以下の要素を表す

◆名前の構成
 ●●●-▲▲▲▲-■■■■■■

 ●●●:エリア識別名(八郷ならばYSTなど)
 ▲▲▲▲:制限空域名
 ■■■■■■:制限事項

 制限事項での記述と意味
  飛行禁止:FLNG
  着陸禁止:LDNG
  下限高度制限:LNG×××
  上限高度制限:HNG×××
  ※×××は高度で123ならば1230mを表す

例 YST-002-HNG150

 YST エリア表記(この場合YaSaToを表す)
 002 制限空域名(この場合002と言うネーミング)
 HNG150 制限事項(この場合高度1500m以上の飛行を禁止)

◆例外
 上記の命名規則の例外として、空港などの管制空域は以下のように記述してあります。

 UTNMY-AP-FLNG → UTuNoMiYa-AirPort-FLNG

これにより、警告画面におけるCTR名を見ただけで制限内容が把握できるため、回避行動をとりやすい。

FLYMASTER用CTRファイル


※真岡の神戸製鋼発電所を追加
※渡良瀬ジャンプの中心地が北に移動



Kortel Design KANIBAL RACE2ハーネスでのスタンディングポジションの考察


Kortel Designのレース用ハーネス「Kanibal Race2」において、スタンディングポジションが取りにくいと言うご意見とご質問を頂戴しましたので検証してみました。
スタンディングポジションは、ランディング体制に入った時に取るべき姿勢ですが、注意すべき点や考慮すべき点などがいくつかありますので、この機会を利用して私なりの意見・考察を私見も交えてご紹介したいと思います。

スタンディングポジションの意味

今さらかもしれませんが、ランディング時にスタンディングポジションを取るのは何故なのでしょう?
知らない方はいないだろうと思いますが、もし知らないのであれば、スクールのインストラクターに聞いてくださいね。

私なりの解釈を申し上げますと、ランディング間際にわざわざ姿勢変化を伴うスタンディングポジションに移行するのは

・低高度でのアクシデントによる落下などの場合において可能な限り足から接地し受け身の体制を取る準備を行うため
・着座姿勢のままだと臀部から腰にダメージを受ける可能性が高いため
・着陸時即座に走り抜けられるように
etc

など、まだまだいろいろ意味があるでしょうが、要するに足から降りるための準備を行うということです。

ポッドハーネスはスタンディングを取りにくい

今回、Kanibal Race2ハーネスでスタンディングポジションが取りにくいとのご指摘を受け、セッティングで解消されるものなのかどうかとの質問も併せて受けました。
私なりの回答としては

「そもそも、ポッドハーネスは空気抵抗を減らして速度を出すことを目的とした道具であり、セッティングもその機能を維持しながらパイロットの操作性や居住性を最大限に発揮できるように行われるものである。一方、スタンディングポジションは、本来ハーネスが意図する機能とは別の状態であるため、スタンディングポジションが取りにくいのはある意味当然である」

と言うことです。スタンディングを取りやすいセッティングを行った場合は、おそらく本来必要な操縦性や居住性などが失われることになるでしょう。ですので、セッティングで解決するか否かと言えば

「セッティングでも解決しない」

と言うのが私なりの回答となります。


上記は、スタンディングポジションの検証を行った動画です。

スタンディングAと言うのは、操縦性や安定性をなるべく確保しながらスタンディングポジション本来の機能を発揮するために私なりに工夫した姿勢です。これが良いとか悪いとか、そう言った話ではなく、本質は

「如何に安全を担保してランディングを行うか」

と言うことです。ですので、これを実践してくださいとか、そういう類の話ではないことをご理解いただいた上で動画や今後の話を読み進めてください。

両足を出すと不安定になる?

レースハーネス、特にKanibal Race2のような大きくて重いハーネスの場合は両足を座版から完全に外したスタンディングポジションを行った場合に不安定な状態になりやすいと言えます。ゲットアップシステムまで身体が下がってしまうことで重心も下がり、高めの吊り位置によって体重移動によるコントロールも難しくなるからです。ただし、だからと言ってこの姿勢を取れない訳ではありません。私自身も両足を出したスタンディングポジションをこれまでも取ってきましたし、それでコントロールしながらランディングを行っていました。胸を突き出した前傾姿勢を作ってカラビナに荷重をかける状態を作り出すような姿勢を取ることによって、スタンダードなスタンディングポジションは必要十分な機能を果たすことができます。



上の写真は片足スタンディングと両足スタンディングの横から見た姿勢です。黄色い線は、ハーネス内部での私の身体の状態を簡易的に示しています。
実は、片足の場合は座版の前側に着座した姿勢を保っています。これは、右足を曲げてポッド先端を突っ張っているために可能な姿勢でもありますが、これによって立った姿勢を取りつつも操作性や安定性を確保しています。
一方、両足スタンディングの場合は、座版から完全にお尻が落ちてしまい、腰からお尻にかけての身体のラインは直線に近くなっています。こうなると、立ち姿勢を保つのもなかなか難しい状況になります。

最も注意すべきは吊り位置の変化

スタンディングポジションを取るうえで、最も注意しなければならないことがあります。それは

・カラビナの位置
・ブレークコードのニュートラルポジション

です。着座姿勢の時とスタンディングポジションとでは、吊り位置が同じではありませんので、それによってライザーの位置関係も変化し、結果的には

ブレークコードの引く位置や量が変わってしまう

と言うことが起こります。

特に、最近のハーネスはカラビナの吊り位置が高いものが多くなっていますので、このことに関しては十分に注意を払う必要があります。



写真は動画から切り出したものなので見難いのですがご容赦ください。

これは、それぞれのポジションにおける相対的な吊り位置の違いを比較したものです。Aは片足スタンディング、Bは両足スタンディング、Cは通常の着座姿勢です。黄色い線はカラビナの位置を同一の高さに合わせたことを示しています。

これを見る限り、ライザーのプーリーに対して相対位置が最も近いのはCの着座姿勢であり、最も遠いのはBの両足スタンディングであることがわかります。身体全体が下方に沈み込む訳ですから、ライザーから遠くなるのは当然のことです。

この状態になった時に行う操作量が適切である必要があります。気流の変化などで不意にブレークコードを引いてしまうなどと言うようなことも避けねばなりません。

ハーネスを乗り換えたり、グライダーを乗り換えたりした場合には、このスタンディング時の吊り位置やブレークの引き量の影響を必ずチェックしておく必要があるでしょう。この点をしっかりと認識せずに、形だけの安易な「スタンディングポジション」は

百害あって一利なし

と言うべきでしょう。

何事もそれを行うには「理由」があります。それを抜きにして格好や形に囚われるのは意味のないことです。

安全に飛び、安全に降りることが必要なことは重々承知のことと思いますが、その本質を全うするために、ユーザーの皆様におかれましてはご自身での工夫などもお願いしたいと思います。くどいようですが、道具には用途があります。その用途は全てを網羅するものでは残念ながらありません。それらの点においては、レースハーネスに乗られるような技術レベルの皆様の技術や知識で有効な活用をお願いする次第です。

以上、私の私見を交えたスタンディングポジションの考察でした。
ご覧いただき、ありがとうございました。


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